エコハウス紹介
宮古島ってどんなところ?
宮古島は、沖縄本島と八重山諸島の間にあり、そのどちらとも異なる独自の文化圏をもつ、大変に魅力的な島です。そして台風の通り道にあるため、毎年のように想像を超える風雨が平坦な島を襲います。毎秒50m以上の最大瞬間風速も珍しくなく、宮古島の家は台風対策が基本。また蒸し暑い夏を快適に過ごせる工夫も必要です。
宮古島の建材や伝統を生かす
このエコハウスは鉄筋コンクリート造。外観の特徴は西側外壁に使っている「花ブロック」です。花柄のような文様があることからこのように呼ばれている化粧空洞コンクリートブロックで、沖縄地方特有の建材。西側には、強い日差しや台風の風などを和らげる「緩衝帯」としてバルコニーやサービスコートが設けられていますが、花ブロックはその外皮として使われています。強い西日を柔らげ、適度に影のある柔らかな光を室内にとりこみむとともに、台風北上の際には乾いた風を室内に導く仕組みにもなります。その他、西日の強い軒先や北風のあたる軒先にも置かれた花ブロック、緩衝帯としての半戸外空間、そして周囲に巡らした防風林など、この地方の先人の工夫が随所にとりこまれています。
屋根にはベンチレーションブロックの上に木質ペレットを敷き、屋根スラブの表面温度を下げる外断熱の方法を用いていますが、ここで使われている炭酸カルシウムペレットも、隆起珊瑚礁の島である宮古島の硬度の高い地下水を硬度低減化する過程で排出されるカルシウムからなる自然素材です。
閉じつつ開く住まい
建物の敷地は細長く、南から入ります。南北に主要居室を置き、廊下・水廻りなどの共用空間や室内テラスがそれらを結ぶ構成になっています。全面開放型の格子戸、網戸、硝子戸の三重構成の建具や玄関横の土間空間によって、強い日差しや台風から身を守りつつ開放的な「閉じつつ開く」住まいを作り上げました。主寝室から共用のLDKやテラス、廊下へと緩やかにつながる空間は、「プライバシーのグラデーション」を実現し、吹き抜けに面した学習室など、共用空間の多様な広がりを体感できます。
見学・宿泊について
当エコハウスを見学・宿泊希望の方は、電話かFaxにてご連絡をお願いいたします。
企画政策部 エコアイランド推進課
Tel : 0980-72-3751 Fax : 0980-72-3795
活動の状況
宮古島市では、市街地型・郊外型の二つのエコハウスの活用を通じて、理解促進に向けた様々な情報発信を行っています。
市街地型・郊外型エコハウスにおいては、見学や体験宿泊の他、定期的に講座を開催し、多くの市民に足を運んでいただくことで、夏の涼しい風通しや強烈な日差し対策などの工夫についての理解を深めています。
また、平成24年3月には、エコハウスで計測したデータの解析結果についての報告会を行い、島内建築関連者をはじめとする関係団体等と蒸暑地域における住まいのあり方を共有しています。
今後も、地域におけるエコ情報の発信拠点として、また次世代を担う子どもたちの環境学習の場として、エコハウスを活用した幅広い取り組みを展開してまいります。
設計者の意図
宮古島では住まいづくりをすすめる上でまず第一にあげられる条件は耐台風型であること、そして蒸し暑い夏を快適に過ごせることです。言い換えるとシェルター性を高めるためには閉じ、アメニティ性を高めるためには開く、つまり「閉じつつ開く」という矛盾した課題を抱え込んでいることになります。
宮古島の先人達はこの難題に翻弄されていたでしょう。非日常の台風災害に対応して閉じることを優先させてしまうと日常が快適ではなくなり、また、日常の快適さを優先して開いてしまうと台風の被害をこうむってしまう。実に悩ましいことです。先人達は、風水のよい場所を選び、集まって住み、環境集住体として「閉じつつ開く」手法を形にしてきたものだと思われます。そこには、あらゆるレベルのバッファーがあります。強風を弱めたり、涼風を引き入れたり、集住の中にプライバシーのグラデーションがあり、暮らしの秩序をなしている。それは島空間のエコハウスそのものです。このような知恵の集積した環境集住体のDNAを引き継ぐことから現代のエコハウスを始めたいと考えました。一方、先人達の残した課題もあります。その課題は、シェルターとしての住まいをつくるのに精一杯で以前の経済事情からするとアメニティ性の実現までは手が出ないという赤瓦葺き混構造の当時の家屋に見ることができます。そのシェルターに現代の経済力でアメニティ性をプラスすることで、住空間の豊かさを実現することを目指しました。家というものは、その時代の「見える経済」といえるのかもしれません。
軒を深く張り出し、雨の打ち込むのを防ぎ、西日の強い軒先や、北風のあたる軒先に花ブロックを積み、いろいろな緩衝帯としての半戸外空間があります。更に、敷地の周囲にはフクギをはじめとする屋敷林をもうけ、防風のために幾重にも緩衝帯で囲んでいます。そこには伝統的な環境集住の知恵があります。
エコハウス、かならずしも新しい試みではないことに気づかされています。
設計
- NPO蒸暑地域住まいの研究会
NPO蒸暑地域住まいの研究会
〒901-2114
沖縄県浦添市安波茶1-32-13
Tel : 098-871-3122 Fax : 098-871-3133
Mail : info@sumai.asia
http://sumai.asia/
- 伊志嶺敏子 一級建築士事務所
- 伊志嶺敏子
伊志嶺敏子 一級建築士事務所
〒906-0012沖縄県宮古島市平良字西里269
Tel : 0980-72-2116 Fax : 0980-72-3194
Mail : ishimine@orange.ocn.ne.jp
建築概要
建物概要
構造・階数
RC造・2階建
敷地面積
173.35㎡
建築面積
111.16㎡
延べ面積
191.27㎡
外皮面積
403.54㎡
主要な部位
屋根〜天井
ベンチレーションブロック100・空気層50・コンクリート床板150・小屋裏空間150・杉板15
外壁〜内壁
コンクリート打放し180・空気層50・杉板15または花ブロック
床〜地盤面
杉板30・床下空間170・土間コンクリート100・ポリスチレンフォーム50・防湿シート・砕石100
開口部
建具の構成
既製アルミサッシ・木製製作建具
ガラスの仕様
単板ガラス5
日射遮蔽部材
花ブロック
断熱補強部材
ベンチレーションブロック
自然エネルギー
太陽熱利用
①:太陽熱温水器(集熱パネル3㎡・貯湯槽227L)
消費エネルギー
ガス
②:潜熱回収型ガス給湯器(プロパンガス使用・33.3kW)
主要な設備
暖房方式
なし
冷房方式
なし
全般換気方式
第3種換気
給湯方式
①の太陽熱温水器と②の給湯器による
環境性能
熱損失係数 Q値(平成11年基準値) | - |
---|---|
夏期日射取得係数 μ値(平成11年基準値) | 0.211(0.06) |
外皮平均熱貫入率 UA値(平成25年基準値) | - |
冷房時の単位日射強度あたりの日射熱取得量 mC値 | 29.02W/㎡K |
暖房期の単位日射強度あたりの日射熱取得量 mH値 | - |
実開口面積比率・開放面積比率 | 24.5%・53.7% |
相当隙間面積 C値 | 未測定 |
模擬居住調査による一次エネルギー消費量 | 42.5GJ/年 |
模擬居住調査によるCO2排出量 | 2.5ton/年 |