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エコハウス紹介
水俣市ってどんなところ?
熊本県の南端にあって、明治末期に化学工場が立地してから人口も急速に増加し、工業都市として発展してきました。その近代化の過程で発生した水俣病の教訓をもとに、市民協働による環境モデル都市づくりの取り組みが高く評価され、平成20年に国の「環境モデル都市」に認定されました。平成23年には環境NPOが主催する「日本の環境首都コンテスト」において、日本で唯一の「日本の環境首都」の称号を獲得しています。
足るを知る普通の家
このエコハウスは3つの基本コンセプトに沿って建てられました。一つ目のキーワードは「地元」。地元の建材を使い、地元の職人が地元の人々に合う家づくりをすること。二つ目は自然に対し何も足さない、何も引かない、CO2排出量の少ない家。三つ目は必要以上に求めないこと。夏は暑くない程度、冬は寒くない程度。少しの不自由さを楽しみに変え、自然と共存しながらつながりを大事にする。昔の知恵から学ぶ日本の家の暮らしを提案しています。
伝統構法・自然素材
しっかりとした地元産の柱や梁・足固め。金物に頼らず、込み栓800本を使用した地元大工の手による伝統構法の住まいです。
杉の樹皮でつくった断熱材を壁と床に使い、日射遮蔽として南の軒の出を2mと深くしています。冬は近くの山で余った木を薪ストーブに入れて暖をとり、吹抜けを通して2階も暖める仕組みを考えました。
土壁・三和土・床畳・紙障子・杉板床・漆喰など、自然素材を積極的に使用しています。土壁は、夏は除湿効果で涼感、冬は加湿効果で暖かさを感じさせ、優れた調湿効果を発揮します。
見学・宿泊について
当エコハウスを見学希望の方は、電話かFax、またはメールにてご連絡をお願いいたします。
エコハウス管理事務所
Tel / Fax : 0966-84-9006
Mail : minamata_ecohouse@oboe.ocn.ne.jp
※宿泊は実施しておりません
活動の状況
水俣市では、伝統構法で作った水俣エコハウスの魅力を多くの方に体験・体感して知ってもらうために、建設直後から、季節のイベントを行ってきました。例えば「秋の夜のお茶会」や「手漉き和紙年賀状づくり」、「蕎麦打ち体験」、「豆腐作り体験」、「薪ストーブを使ったピザづくり」などです。また、伝統的な土壁づくりを子供達が楽しく体験出来る「伝統技術子ども体験会」などを実施してきました。
さらに、熊本県立水俣工業高校建築科の生徒達が課題研究の一環として、木材の切り出し・加工を経てエコハウスの物置を建設するというセルフビルド事業に取り組みました。
自然に対して「何も足さない何も引かない」の精神を基本として建築したこのエコハウスは、夏も冷房無しで過ごせる住まいを目指しています。真夏の最高に暑い日に実際の温度と体感温度の違いを感じる「灼熱セミナー」を実施しました。
また、熊本県立大学の協力で、居住実験や環境性能の継続的な測定を行っています。
ブログ「足るを知る普通の家 水俣エコハウス日記」
http://minamata-ecohouse.cocolog-nifty.com/
ウェブサイト「環境共生型モデル住宅 水俣エコハウス」
http://www.minamataecohouse.jp/
設計者の意図
省エネのためには「家のつくりようは冬を旨とすべし」という意見が近頃多くなりました。確かに寒冷地では暖房エネルギー費用が年間20万円ほどかかり、省エネのために冬を主体に考えなければなりませんが、南国熊本では暖房エネルギー費用は年間2万円程度です。費用対効果を考えると、寒冷地と同じように外皮性能を上げるより、年間6万円以上かかる家電や給湯エネルギー費用の削減を優先した方がよいと思います。
夏は風通しを考え、軒は深く、エアコンなしで、扇風機と団扇で暑さをしのぎ、冬は近くの山の木から薪を入手し薪ストーブで暖を採ります。
ここ水俣では地下資源のエネルギーをあまり使用せずとも生活できます。昔の日本の暮らしの知恵を生かし、少しの不便さは楽しみに変え、暑さ、寒さを適度にしのぎながら季節を感じるのがよいのではないでしょうか。室内だけの完成度をあげるのではなく、外部へつながりながら、家庭菜園、縁側での日向ぼっこ、味噌部屋への動線と、暮らし感を体験できるモデルとしての水俣エコハウスです。
断熱性能はあえて平成4年基準(設計Q値は4.3W/㎡K)を目指しました。気密性能の数値はやや低く、障子や戸を閉めて換気1.2(回/h)です。温暖地では不自由さは感じません。気密性能をあげると機械換気が必要となり、換気エネルギーが増大するので、兼ね合いが問題です。
省エネは、運転時のエネルギーだけでなく、生産時や処分時のことも考えなければなりません。
木材を資源と考えると日本は資源大国です。竹、土、稲藁は有り余るほどあります。木、竹、土、稲藁で造る伝統的な工法の家は、断熱・気密性能において石油製品に若干劣りますが、役目が終われば土に戻るか燃やせば煙になる建材では、環境問題など起こりません。生産時・処分時までも考えると伝統的構法は最高の省エネ住宅となるのではないでしょうか。建築材料を性能にだけ目を向け、高性能な建材を求め過ぎ、そのことが環境汚染につながるなら本末転倒です。
特に建材に使われる重金属は、解体処分時に問題が発生するので、永久管理が必要です。前もって生産時に処分費用を価格転嫁すべきと考えます。処理しない廃棄物が原因で水俣病事件が起こりました。2度と繰り返さないために水俣エコハウスから発信します。
設計
- すまい塾古川設計室
- 古川保
すまい塾古川設計室
〒861-4115
熊本県熊本市南区川尻4丁目10-5
Tel / Fax : 096-357-0973
Mail : sumai-hurukawa@basil.ocn.ne.jp
http://www.sumai-f.com/
建築概要
建物概要
構造・階数
木造軸組・2階建・ベタ基礎
敷地面積
361.69㎡
建築面積
96.58㎡
延べ面積
130.61㎡
外皮面積
349.11㎡
主要な部位
屋根〜天井
和瓦一部鋼板0.4・アスファルトルーフィング22㎏・野地板12・小屋裏空間・鉋屑不繊布詰100・杉板12
外壁〜内壁
漆喰塗・ラスモルタル15・透湿防水シート・下地板12・杉樹皮断熱材30・竹小舞土壁塗漆喰仕上60
床〜地盤面
杉板21・杉樹皮断熱材30+30または藁畳60・杉板15・杉樹皮断熱材30・断熱境界外床下空間平均985・コンクリートベタ基礎150
開口部
建具の構成
木製製作建具・既製アルミサッシ
ガラスの仕様
単板ガラス5
日射遮蔽部材
木製雨戸
自然エネルギー
太陽光発電
1.874kW・地上架台設置
太陽熱利用
①:地上設置空気集熱式ソーラーシステム(太陽熱集熱パネル4㎡・潜熱回収型ガス給湯器・貯湯槽200L)
消費エネルギー
ガス
①の潜熱回収型ガス給湯器
主要な設備
バイオマス燃料
②:薪ストーブ(15.2kW)
暖房方式
②の薪ストーブ
全般換気方式
機械換気なし
給湯方式
①のソーラーシステムによる
環境性能
熱損失係数 Q値(平成11年基準値) | 3.9W/㎡K(2.7) |
---|---|
夏期日射取得係数 μ値(平成11年基準値) | 0.058(0.06) |
外皮平均熱貫入率 UA値(平成25年基準値) | 1.38W/㎡K(0.87) |
冷房時の単位日射強度あたりの日射熱取得量 mC値 | 8.15W/㎡K |
暖房期の単位日射強度あたりの日射熱取得量 mH値 | 10.20W/㎡K |
実開口面積比率・開放面積比率 | 16.1%・23.1% |
相当隙間面積 C値 | 22.8㎠/㎡ |
太陽光発電パネル容量 | 1.88kW |
模擬居住調査による一次エネルギー消費量 | 106.8GJ/年 |
模擬居住調査によるCO2排出量 | 1.7ton/年 |